沖縄県民にたいする負担軽減のために、鳩山氏はかねて米軍基地を国外、少なくとも県外移転を主張されてきた。これが、まさに現下の日本国民の偽らざる民意であり、これが結実した結果が現政権の誕生であった。鳩山首相は対外的に如何なる困難があろうとも、この民意を忠実に実行する義務と責任がある。
沖縄米軍基地の交渉の経過をみても、あまりにも多くの料理を恐る恐る出しているような、および腰の外交姿勢がそもそも間違っている。いくつも定まらぬ案を出して、これで決めてくださいなどというのは、国家交渉の本来の姿とは思えない。はじめから腹を見透かされ、馬鹿にされるのが落ちだ。
首相就任以来、鳩山氏の統治姿勢は首相の姿とは到底思えないような、なにかゲームでもやっているような姿、地位をたのしんでいるような気軽さを感じた。言わなくてもよいようなことをくだくだと発言するかと思うと、謙譲の性格ゆえか、馬鹿丁寧な敬語の連発がときに国家の威信を傷つけ、弱腰とも及び腰とも映ることに気づいていないようだ。
謙譲語は時として卑屈語にもなる。
首相の発言は重く、国家の姿の表明であることに留意してほしい。郵便法に関する亀井大臣との間の意見相違についても、子供の喧嘩ではないのだから、言った、いや、言わない、私は約束はしていない、などの応酬をテレビ画像にのせた挙句、最終的には亀井大臣の言うとおりになってしまうなどは,一体、鳩山氏とはどのような人か、オバマ大統領にかぎらず誰しも理解に苦しむ。首相としての識見に著しく欠けるものではないか。しばしば口にする「命がけで職務を遂行している」姿とは到底みえない。
さて、基地問題、さらに日米関係の新しい構築には、かつて、伊藤博文が朝鮮併合の一大事に臨み、
「朝鮮問題にかかわる者は死を覚悟しなければならない」
と重大な決意と覚悟で臨んだように、腹を括った覚悟であたらなければ遂行できない難事である。軽々な発言を繰り返すようことでは成就できる様なものではない。不言実行の真摯,裂帛な姿勢が求められる。
この問題に関する亀井大臣の見解は直截明快であった。
氏は「米国に対してこうしたいから協力してくれ,といえばすむことだ」という。まさに、この一言が王道である。あと、ボールを帰すのは米国側となり、どのような球筋が帰ってくるか、それからが外交手腕の試されることになる。 もし対等な国家同士の話し合いというなら、当然のことながらこういう形になって然るべきではないか。
そこで、米軍基地問題につき鳩山首相に提言したい。 日本国内のすべての米軍基地の撤去を求めること。グアム、ウエーキ、サイパンなどへ移転を強力に推進。膨大な費用の30―40%ぐらいは日本側が負担してもよいかもしれない。そもそも、米軍が日本に基地をおく戦略価値はまったくない。日本に基地をおかなければ日本を守れないなどという論理は、一部の人間のほか通用しない。米国はみずからの血肉を散らした沖縄を、ただ、手放したくないというが本音なのだ。
1、日本国民の民意を踏みにじってまで基地をおく米国の主張は、日本の安全を守るという理念にたいする根本的誤謬である。日本国民の総意は米軍の退去を求めている。日本国民の民意を踏みにじり、一方的に我意を貫くことは、将来にわたる日米関係の確固たる発展に益するものとなりうるだろうか。現世界の趨勢は、他国に軍事基地を永続的に使用する権益を付与するような、軍事協定の存在を正当化しない方向にある。米国が沖縄軍事基地に執着する根本にあるのは、占領した領土という潜在意識が働いているからだ。
2、以上の点が合意されなかった場合、日本のとるべき対応は下記の如し。
3、従来の日米協定を破棄し、ゼロベースから見直すかどうかの国民投票を実施。
4、国民投票のテーマは、自主防衛を掲げ核戦力以外のあらゆる兵力の増強を行う。ことに核ミサイル防衛能力の飛躍的発展をめざし、国民は増税を忍んでも巨額な予算投入を許容し、5年以内に外部からのミサイル攻撃を完全に撃退しうる防衛体制を構築する。
5、これをもって、核に変わりうる防衛能力、国家戦略を構築し、世界各国に核兵器保有の無意味であることを認識させ、結果的に核廃絶への機運を促進する。
一言で言えば、就任以来の鳩山首相はeasy going な姿勢に終始し過ぎたようである。沖縄問題も最初から国外移転の線で腹を括り、自ら指導者して米国と交渉していれば、こんなことにはならなかった。各大臣に勝手なことを喋らせ、言わせ、行動させ、あまつさえ適任とは思えない(小生にいわせれば英知も哲学も感じられない無能な)平野官房長官をもってして、難しい基地問題の責任者とするなど、傍観者の日和見を決めこんでいたことが、今日の結末をもたらすことになったと言えよう。最初から、国外へ移転させるという線でまとまっていれば、それなりに米国と交渉経過をもつことができたはずだ。結果はかならずしも日本の思惑通りには行かないにしても、もっと早くそれなりの成果がえられたに違いない。
外交交渉はある意味で喧嘩である。言説巧みに相手を説得できれば最高だが、多くの場合、握手しながら反対の手で殴りかかるか、あるいは応分の利益を与えるかである。これができないような政治家では為政者とはいえない。こんな腰抜け外交をやっているうちは、到底、米国にかぎらずロシアとの国境確定も覚束ない。
鳩山首相の御健闘を願ってやまない。