中国のことわざに君子豹変というのがあります。君子といわれるほど偉いから変節する、というのが本義だが、君子と嘲られるほどの人間だから変節する、という穿った見方もあります。
尖閣諸島周辺海域の事件以来、日中間には緊張状態がつづいているが、ここにきて、日本非難の声に少し変化がでてきたようです。今までの中国外務省報道官の姜さんも、眼鏡ごえに一所懸命ヒステリックな非難声明を繰り返していましたが、昨今は気味の悪いほどおとなしくなっています。そのせいか、色気も漂う。
かねて、潮騒(困った隣人中国)で、中国政府の滅茶苦茶な行動が、かならず世界の指弾(爪はじき)を受け、中国の政府・国民の利益にならぬ、と予言していました。今、そんな風になっているようです。
だがここで、われわれ日本人が見過ごせないのは、中国政府の軌道修正がたんなる微調整に過ぎず、領土を含む多岐にわたる本来の利益追求・版図拡大の野望が、すこしも変わっていないということです。すでにかなり野望の手の入っているアフリカのみならず、近頃はヨーロッパ、ギリシャあたりまで触手をのばしはじめているようです。
こうした情勢好転に気を緩めたり、多少おとなしくなったから、などと安堵の胸を下ろしていているようでは、日本国の先行きは真っ暗です。
中国の覇権主義、帝国主義は、従来のものとは性質が違います。彼らが使う「核心的」に表徴されるように、たんなる領土的野心だけでなく、すべての分野、資源・経済・財政・国際金融・知的財産・文化・教育にいたる広範な制覇が、「核心的」なのです。同じ土俵の国家なら、ともにこうした目標に向かって協力する道もありましょう。もともと日本は平和を希求する国家なのですから、平和秩序の構築には労を惜しみませんが、中国という国はそうはいかないのです。
われわれには考えられない、国際ルールも一般常識からも逸脱し、道理、秩序、国際ルールも通じない、恐ろしい国家が中国なのです。今回の尖閣諸島領有権主張、領海侵犯行動をみるまでもなく、およそ想像を超える暴挙を平然と行える国です。今や、日本国のまわりには北朝鮮についで、世界一、二を誇る強大国家中国という、無謀な国家が現出しているわけです。
この現実は深刻です。一夜にして民衆を狂わせ、過激な世論を沸き立たせ、無謀な行動へと走らせることのできる、民意なき共産主義国家、中国の存在を深刻に受け止めなくてはならないでしよう。
この間における日本政府の対応についていろいろ議論がありますが、残念なのは、いずれも長期戦略に欠ける議論に終始していることです。これからの中国と如何につき合うか、という確固たる長期戦略こそが、喫緊の論点であってほしいのですが。
長期戦略として大略次の二つが考えられましょう。
日米の緊密な連携、
独自の戦略核装備計画
日米の緊密な連携
従来の政治家が考えるような、米国べったり依存型の日米協調体制ではありません、日本の利益を最大限尊重される形で、米国との協調を図るという点が、従来と著しく異なるのです。
したがって、沖縄基地問題の対処法も、沖縄住民の民意に反する解決策など存在しません。米国も現下の世界情勢にあって、日本国民の真摯な反対を押し切ってまで、自己主張を通すことの不利益を認識しなくてはなりません。また、沖縄に軍事基地を置く必要性はけっして高くないのです。現状の国際関係、兵器性能の進化・高度化を勘案すれば、たとえ地勢学上不利があっても、沖縄に基地をおく絶対的理由はないはずなのです。
外交はメリット・カードを如何により有効に、デメリット・カードを如何により小さくするかであります。メリットは他方のデメリットである一方、やり方一つで逆にひっくり返ることもあります。一枚のカードにもメリットとデメリットが表裏になっています。使いようで変わってしまうということです。
今回の中国の尖閣諸島周辺騒動をみて、米国は早速メリット・カードを出してきました。米軍の沖縄基地が日本防衛に如何に必要か、と日本人に認識させるカードです。しかし、これをそのまま米国のカードとするようでは策がありません。いつまでたっても二流国家から脱し得ません。よしあしは別として、北朝鮮・イラン・イスラエル・インド・パキスタンのような国でも、強かなカードを繰り出す知恵があり、それぞれ目的を完遂しているか、しかけています。日本政府、政治家には、もっと知恵のあるカードの出し方を工夫してほしいものです。沖縄に固執する米国の戦略が、将来の日米関係に好ましいものでないことを、外交、政治、経済、両国民の感情などを総合し、理解を求める努力をしてゆかなければなリません。
米国の軍事基地すべてを国外に移転させる。これこそが将来にわたる日米協調の礎石、との認識が共有できるまで、両国の政府・政治家は議論をつくす必要があります。そこには、日米両国ともに叡智ある高度の政治判断が求められています。
以上のような主張をしても、おそらく米国は耳をかさないでしょう。日本の政府・政治家、外交官の覚悟のなさを見抜いていますから。
ところが、日米ともに利益となるカードがあるのです。それは、日本が自前の戦略核を装備する決意を示すことです。前段に述べた中国の無謀な台頭が、将来、必ずアジアしいては世界の安寧秩序維持の重大な障害となる、との共通認識が形成されれば、日本の戦略核装備の必然性が容認されるどころか、むしろ米国にとっても歓迎すべきこととなるのです。このあたりの局面を展開できる政治家、外交官が、今こそ日本に求められているのではないでしょうか。
次に、独自の戦略核装備計画について述べます。
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