沖縄米軍基地と鳩山首相
沖縄の米軍基地問題は国民注視の的となっているばかりか、鳩山政権の今後を占う重大な政治課題となっている。従来、自民党政府の基地対策は日本国民の民意、ことに沖縄県民の民意を尊重するものではなかったばかりか、対米一辺倒の、ただ米国の意を入れるだけの隷属的政策にしかすぎなかった。こうしたことが政権交代につながったのである。民意をおろそかにする自民党政権の姿勢は、成田国際空港の開設にもみられ、数十年もたった今に至るも、なおハブ空港としての骨格さえ整えられずにいる。
今回の沖縄米軍基地問題についても、民意を無視すればするほど解決への道筋は遠くなる一方、政権不信の声はますます高まることは必定であろう。
各識者、各論調のいずれもが基地問題の解決は難しいという。だが、けっしてそうではない。方程式の項は米国軍事戦略と日本国民の民意という二つしかないのである。
日本国民のなかにも、基地存続のメリット、あるいはデメリットを唱える者がいる。米国にも同様にメリット、デメリット論があろう。だが、従来の外交官が抱くような対米関係重視の姿勢、その実情たるや、何事も米国の機嫌を損なわぬ隷属外交姿勢をもってしては、到底、この方程式に解はない。
日本国民が最大のメリットと思うことが将来的に、如何に米国の最小のデメリットであるか、認識させる知恵がなければ解決策に至らない。従来の政治は、最初から米国の最大のメリットを容認することからはじまっている。これでは、日米関係の将来にわたる安定的構築は期しがたい。日本のデメリットに慎重な配慮の足りなかったことが、問題をますます複雑かつ継続困難なものにしているのである。
世界の流れは昨日とは違う。激しく流動する情勢に、両国とも如何に対処するか互いにわかっているはずだ。ましてや、世界情勢の分析では米国の方に数段の長があるだろう。
ゆえに、日米協調路線という貴重な国家戦略上の財産を、たかが基地問題で手放すほど米国は愚かではない。ここに解決の糸口を見出せるのではないか。
すなわち、日本のメリットを一途に探る外交姿勢を貫く以外に解決策はないのである。そもそも国益重視が外交の基本である。そうでなければ、将来にわたる良好な日米関係の構築は不可能である。米国も幕末のペリーのような恫喝外交であってはならない。
将来にわたる日米協調強化のために、首相の決断と覚悟がつよく望まれる。
虚言首相という情けない汚名を残すか、真の日米友好の礎石をつくった英断の政治家の名を残すか、今や鳩山首相の正念場が近づきつつある。