連日,国会での予算委員会の映像が放映されている。
国民は与野党の論戦の攻防を期待しているが、質問・応答にかみ合わない場面が多すぎるようだ。野党側の質問の目指すところを明確に答弁して欲しいところだが、与党の答弁者は揚げ足を取られまいと慎重な言葉選びをするあまり、エー、アノウ、コノ、ソノなどの言葉が多すぎるようだ。事を曖昧にするのも政治家の腕の一つであろうが、煙幕もあまり多用すると、その答弁者がいかにも不誠実な品格であり,信念のない人間との印象を曝け出すことにもなりかねない。嘘をついている、あるいはやる気がない、などと思わせてしまう虞さえある。
こうしたことは、残念ながら内閣の中枢にいる首相、官房長官に顕著のようだ。ことに、官房長官にいたっては、言葉そのものも茫漠、何を言わんとしているのか理解しにくい。おそらく彼の頭に、国民に理解してもらうという配慮などまったくないのであろう。その論旨のわかりにくさは、まさに絶品というほかはない。ふと、弁護士というより三百代言という言葉が浮かぶ。前原大臣、玄場大臣などは比較的にすっきりしていて分かりやすい。
テレビのない時代であったが、吉田首相の演説などは短慮の嫌いはあったが、簡潔にして明快に聞こえたものである。中曽根首相もすらすらと喋っていたように思う。近くは、なんといっても小泉首相だ。簡潔にしてわかりやすい一言で、なんとなく国民を納得させてしまう術に長けていた。だからこそ型破りの政策も遂行できたのだろう。自民党の林代議士も、よく練られた質問要旨、品格ある態度に感服させられるが、さらにその明晰な追及・論旨の進め方が清清しい。これと正反対なのが、同じ自民党の西村代議士だ。折角の鋭さも見苦しい。
政治家たる以上、ヘーゲルの弁証法ぐらいは理解されているのだろうが、国民を納得、理解させる姿勢を忘れず、論旨明快な弁論を展開されることを期待したい。信念を疑わせ逃げ口上としか思わせない饒舌や、弁論術を心得ない論戦では、国民の信任は得られない。