メイン | 乃木夫妻自殺事件の真相    乃木夫妻の死には、多くの国民が心から哀悼と敬意の念をいだいた。筆者も、国民小学校の先生から話を聞いた時、目を紅くし鼻を詰まらせた。そして、乃木将軍の忠烈無比の殉死の話は、筆者の胸に今日まで焼きついて離れることはなかった。だが、知らぬまに戦争の道をひた走る、狂気の風に流される少年になっていた。英語にひときわ堪能な兄は米潜水艦の魚雷にやられ海に沈んだ。その兄を追った次兄も死んだ。にもかかわらず、一年さきの特攻隊志願を夢見る軍国少年となっていた。  歴史のひきずる虚構の影響は大きい。虚構の歴史はまた虚構をつくり、そのために言論規制や弾圧が強化される。乃木事件もその後の日本の進路を作った歴史の一つであった。国民のあるべき姿としての乃木像、忠節を尽くすに殉死をもってする乃木夫妻像が、日本国民の範となり国家の指針の一つとなったことは否めない。だが、乃木事件の真相は封印され、勇躍死地に赴く忠勇従の国民性を醸成する思想誘導に利用されていた。国民も幻の栄光を夢見る、危険な覇権主義の道を歩くようになっていた。それゆえ当時、乃木の遺志であった乃木家断絶も、伯爵号の辞退もあってはならないものであった。ましてや事件の真相は永久に封印さるべきものであった。歴史歪曲の引きずる影響はけっしてすくなくない。 »

2009年5 月31日 (日)

コメント

フィード コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。

この記事へのコメントは終了しました。